【サイドカーの運転 Part3】
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サイドカーを所有して1年、5,000kmを走行して感じたことを書きます。
本車はBMW K100RSで、フロントサスはウイッシュボーンサスに交換し、タイヤは前後とも4輪車用になっています。側車はNKオートのロードセイラーⅢの新車です。
【サイドカーを運転した第一印象】
NKオートでサイドカーの引き渡しを受け、家までの10kmを走った感想は、「とんでもないモノを買ってしまった!どうしよう!」という後悔でした。
バイクはバンクさせて曲がりますが、サイドカーは体重移動でバンクはしません。ハンドルを切ることで曲がります。
(オーナーの要望で、左に寄るセッティングになっていたそうですが、初心者には分かりません。ただ、センターラインを越えようとする特性の方が危険なので、そうしたのでしょう。)
単車のような直進性は無く、常に路面の影響を受けて左右に進路がずれ、真っ直ぐに走らない。急制動でも進路を変えてしまう。……そんな「予想の出来ない動き」をするモノだったから、走らせることで精一杯。当初は周囲を見渡す余裕なんて皆無で、「これは自分には扱えない!」と思ったのでした。
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【サイドカーの挙動の法則】
それでも意地になって乗り続けていると、ある法則に気づきます。
走行中は路面の影響で車体が左右に揺れるのがサイドカーの特性ですが、「車体が傾いた方へと曲がろうとする」という規則性があります。だから、「車体が傾いた方のハンドルに少し力を入れることで直進が保たれる」のです。
「傾いて身体が倒れかかった方のハンドルに力を入れるだけ」……それに気づけば、サイドカーを真っ直ぐ走らせるのは簡単なことです。(単車に比べれば、ある程度の幅をふらつきながら、という直進性なのですが。)
さらに慣れれば、身体が横Gに自然と反応してハンドルを操作するようになります。
また、アクセルのオン・オフによる変化が把握できてしまえば、「アクセル・オフ → コースアウト」の不安も無くなります。
左右非対称の3輪という車体構成に由来する挙動よりも、ハンドル操作による旋回力の方が強いのですから、ハンドル操作で簡単に挙動を修正できるのです。
【本車側への旋回はアクセル・オフなのか?】
サイドカーの操縦法の解説には、「側車側への旋回はアクセル・オン、本車側への旋回はアクセル・オフ」とありますが、正しくないと思います。
「側車側への旋回はアクセル・オン」は、その通りです。側車よりも本車が先に走るので、旋回力が増し、楽に曲がれます。ただ、側車に人を乗せていない時は、遠心力で側車が浮き上がり易いので、スローイン・ファーストアウトの原則を守らなければなりません。
「本車側への旋回はアクセル・オフ」は、高速走行時の車線変更ではその通りです。しかし、ワインディングロードを走らせている時は違います。
単車なら左右に関係なく、トラクションを掛ければ旋回性がアップします。サイドカーも同じです。本車側への旋回でも、アクセル・オンにする方が、安定して旋回します。おそらくは、前輪が進もうとする向きと後輪が進む向きがずれるので、後輪の駆動力がオーバーステアの特性を引き出すのでしょう。そして、側車輪が支えとなって、自動車に引けを取らないコーナーリングスピードで曲がることができます。
それに、急な下り道の本車側旋回でアクセルを全閉にするのは恐怖です。車輪が存在しない場所である側車の前方へ重心が移動するのですから。
結論は、「右旋回も左旋回も、アクセル・オン」というのが、私の答えです。
これは、太陸モータースの太田氏が、「コーナーは全開で走れなければダメ!」(※)と言っていたことと符合します。
(※『BMW BIKES』vol.36のP.103 小関和夫氏のコラム『良いサイドカーとは?』より)
【急制動】
急制動の件も、ブレーキパッドに当たりがついてきてからは、前後ブレーキの掛け具合とハンドル操作で対処できるようになり、今では不安無く乗っています。
【サイドカーは安定している?】
「サイドカーは単車より安定している」という記事を見ますが、「安定」の定義によって答えは変わります。
直進時の安定性は、単車の方が遥かに上です。
単車でも、レーサーレプリカは旋回性を重視したセッティングですが、概して大型バイクは高速道を矢のように直進して行きます。
単車を運転していて、首に左右の横Gが掛かることはあまりありません。掛かるのは加速・減速のGと路面からの突き上げによる上下動です。
サイドカーは、側車を含めた車体全体では、前輪が片側に寄って付いているため、うねるような挙動が出ます。スピードを上げるにしたがって揺れは大きくなり、乗員は左右の激しい揺れを受けますし、進路も安定しません。
横風を受けた時も、サイドカーはハンドル操作で修正が必要です。側車側からの強風だと、側車が浮かないか不安になることがあります。バンクさせることが出来ないので、側車側へ腰をずらし、姿勢を低くして対処するくらいしかできません。
カーブで路肩に浮いた砂がある場合の不安は、単車より少ないです。
サイドカーも倒れることがあります。側車側への急旋回では、側車が浮上する事があり、行き過ぎると転覆を起こします。
下り坂で本車側への旋回中に急制動をすれば、側車側へ前転する事故に繋がります。
つまりは、単車とサイドカーの「安定」の意味・基準が違うので、比較は出来ない、ということです。
【おわりに】
ガソリンを使用する内燃機関の先行きは明るくありません。度重なる法改正によって、サイドカーを製造するための障害も増えてきました。2輪でも4輪でもなく、トライクでもない、「サイドカー」という乗り物の世界を経験できるのは、今しかないと思います。
(投稿 池田)
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by nkauto | 2013-02-23 01:30 | サイドカーについて | Comments(0)